交通事故から学ぶ罪の重さ

交通事故から学ぶ罪の重さ

タイトルを見てピンと来た方いらっしゃると思いますが、東名のあおり運転で危険運転致死傷罪が適用されたのは、皆さんの記憶にも新しいお話だと思います。

内容的には、あくまで「求刑」なので、被告はこれから控訴するんだろうな…と個人的には、いや概ね多くの方が感じているところだと推測します。

改めまして、今回のブログ担当は販売促進部の井上です。

さて皆さん、改めて危険運転致死傷罪とは何かご存知ですか?今回は「危険運転致死傷罪」と「業務上過失致死傷罪」そして、その間にある「過失運転致死傷罪」について簡単に説明していきたいと思います。


ながら運転はとても危険です

そもそも危険運転致死傷罪とは

危険運転致死傷罪は自動車で一定の危険な運転によって人を死傷させた際に適用されます。

  1. 法定刑は致傷に対して15年以下の懲役
  2. 致死に対しては1年以上の有期懲役

最高20年、加重により最高(30年

尚、執行猶予はつきません。


具体的には以下のような場合に適用されます。

  1. アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行
  2. 制御困難な高速度で走行
  3. 進行を制御する技能を有しないで走行
  4. 妨害目的運転
  5. 信号を殊更に無視し運転
  6. 通行禁止道路を進行し運転

今回は「妨害目的運転」の観点から危険運転致死傷罪が適用されたのだと推測します。この裁判が注目されていたのは「あおり運転」で発生した致死傷に対して危険運転致死傷罪が適用されるのかどうかでした。

何故これが重要なのかというと、日本は自動車事故による刑罰が厳重化されたのが結構最近だったことに起因します。

今でこそ、「あおり運転」なんて言葉が認知されるようになりましたが、「ちょっと昔」であれば、事故を起こして人を死傷させた場合でも適用できる法律が「業務上過失致死傷罪」しかなかったんです。

さて、昔はここに抜け道がありました。


そんな抜け道が?

抜け道のお話をするにはまず、危険運転致死傷罪の成立までの経緯をお話せねばなりません。実は危険運転致死傷罪が成立したのは2001年11月28日です。

思いのほか、最近の出来事だと思いませんか?。この法案が成立した背景には、1999年11月28日に発生した首都高用賀料金所付近で発生した事故がきっかけでした。


その事故は、普通乗用車(妻運転、夫と3歳・1歳の2女児の3名が同乗)が首都高速用賀料金所付近上り本線を走行中、後ろから蛇行してくる12tトラックに追突され、後部座席に座っていた女児2名が死亡する悲惨なものでした。尚、ドライバーはパーキングで飲酒しており、情状酌量の余地のないものでした。…ところが


その当時、危険運転致死傷罪というものが無かったこともあり、適用された法律は業務上過失致死傷罪でした。

業務上過失致死罪は最長で5年の懲役。そして、実際の裁判で適用されたのは、たったの懲役4年でした。


この当時の法律では、人命を奪うような危険な運転行為による事故の場合でも適用できる法律は「業務上過失致死傷罪」以外ありませんでした。刑罰も懲役・禁固または50万円以下の罰金程度だったんです。(誤解なきようですが、これは刑事罰の話で民事では、原告への2億5000万円の支払いが命じられています。)

この事故をきっかけにして危険運転致死傷罪が成立したわけですが…


ここにも抜け道がありました。


それは「危険運転致死傷罪」と「業務上過失致死傷罪」では刑罰の重みが全く異なるわけです。

そうすると、危険な運転行為をした本人たちは刑罰の軽い「業務上過失致死傷罪」になるように動くわけです。


どうするかって?


例えば飲酒運転であれば、事故を起こした後に、一旦雲隠れします。そして酔いが醒めたころに、自首するわけです。

これで「危険運転致死傷罪」を適用するための証拠がなくなります。こうした事例の場合「業務上過失致死傷罪」として扱われるというケースが実際にありました。


当然、そんな馬鹿な話、許されるはずもありません。


だから過失運転致死傷罪

勿論、現在は「危険運転致死傷罪」と「業務上過失致死傷罪」の間の法律といわれる「過失運転致死傷罪」というものが2007年成立しています。


7年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金業務上過失致死よりも重たい刑罰が与えられます。


簡単にいうと、運転の「過失」であれば、危険運転ほどではないにしても、脇見や一時不停止などの不注意の場合でも「過失」になるので、死傷が発生するような自動車事故であれば、ある意味広範囲で適用できる法律だということです。


因みに、アルコールや薬物摂取があったことを隠蔽しようとしたことが発覚した場合は「アルコール等影響発覚免脱罪」が適用、この場合刑罰が加重されて、12年以下の懲役刑かつ、罰金刑がなくなることから厳しい刑罰であることが分かると思います。

また無免許運転も加重対象です。

これに関しては危険運転致死傷罪も同様で加重対象となります。危険運転致死傷罪の場合は最高30年の懲役になるという仕組みです。


今回は危険運転致死傷罪が成立されるまでの背景とそれにまつわる法律のお話をさせていただきました。

危険運転致死傷罪はある意味、今回の事故で広く認識されるようになったと思いますが、過失運転致死傷罪は意外と知られていない法律だと思います。当社はいろいろな車載器を扱っていて、その中には事故を削減するためのものも沢山ございます。

ただ、こういった機器はドライバーの安全運転を支援するのが目的であって100%事故を防いでくれるものではありません。昨今、一般的になりつつある自動ブレーキにも同様のことが言えます。ドライバー自身が気を付けていても、後ろから追突されるケースもあります。人が自動車の運転に介入する限りはこの問題を解決するのは難しいのかもしれませんね。

あおり運転なんて、自動車事故なんてない世の中になるのが一番良いと思うのですが、まだまだ先は長そうです。

2019/4/24 更新しました

4/20の池袋の事故や4/21の神戸市交通局の事故はまさに「過失運転致死傷罪」の疑いがある、典型的な事故です。池袋の事故の方は、信号無視もしていたと報道されているところを見るともしかしたら、危険運転致死傷罪が適用される可能性もありそうです。

前回記述のブログ内にも「⑤信号を殊更に無視し運転」というものがありますし、さらに死傷事故となっていることもあるので厳しい結果が待っているのではないでしょうか?過失運転致死傷罪はこれから危険な事故や運転をした場合に適用されるケースが増えてくるのではないでしょうか?今回の事件を見て、他人事ではないと思いました。

2019/5/15 更新しました

池袋で起きた事故や、大津で起きた事故を始め、連日いたましい事故が全国各地で起きています。ハンドルを握る際は、よりいっそう注意して運転すると共に、最新の安全機器を車につけて、事故を起こす確率を少しでも下げる必要があるのではないかと、日々感じております。

株式会社タイガーでは、車両に後付け出来る衝突防止補助装置「Mobileye580」を販売しております。トラック・バス・乗用車など様々な車両に取り付け可能ですので、お問い合わせください。

タイガー製品一覧Products

株式会社タイガーは、運輸・物流企業様へ物流ソリューションのエキスパートとして貢献し、業界のニーズを踏まえた新規商材へ積極的に取り組んでいます。

並び順をソート
ページの
先頭へ
ページの先頭へ