点呼の人手不足はツールで解決できるのか
こんにちは。タイガーの川井です。
運輸運送業において、点呼業務は切っても切り話せない重要な業務です。今回の記事では点呼業務の概要から、問題点、それを解決してくれるツールのご紹介、という構成になっています。今回初めてご紹介する「ロボット点呼」はなかなか面白いシステムになっています。
新しく始まった遠隔点呼の情報はこちら
トラック運送業の点呼業務とは?
点呼を大まかに説明すると、健康状態や運行に関する注意などを促すことでドライバーが安全運行をしてもらうための作業全般を指します。
運輸運送業における点呼はいわゆる「義務」に該当するので避けて通ることができません。
さて、詳細なお話に入る前に「点呼」と名称の付くものが沢山あったので、一言説明を添えてまとめてみました!
対面点呼 | 乗務前と乗務後の対面での点呼 |
中間点呼 | 乗務前も乗務後も対面点呼できないときに必須 |
IT点呼 | テレビ電話で疑似対面点呼可能 |
他営業所間点呼 | 所属していない営業所で点呼可能 |
グループ企業の点呼 | 同一敷地内のグループ企業で点呼可能 |
受委託点呼 | 別の会社と契約して点呼可能 |
対面点呼と中間点呼が点呼業務そのもので、それ以外は原則Gマーク保有事業所のみに許された超特権だと思ってください。
色んな点呼がありますが、今回は対面点呼・IT点呼に絞ってお話したいと思います。
点呼は原則、運行管理者がドライバーと対面で「乗務前」と「乗務後」に行います。
確認をしないといけない点呼項目は以下のような感じです。
- 酒気帯びの有無
- 健康状態の把握(疾病、疲労など)
- 睡眠時間(睡眠の質)の確認
- 日常点検の実施結果
- 服装身だしなみの確認
- 運転免許証携行確認
- 休憩時間・場所、積み荷場所の確認…etc
全部説明するときりがないので一部分だけ抜粋しましたが、それでもこれだけ確認する項目があるのです。
さて、対面点呼が原則というお話をしましたが、対面点呼ができないケースもあります。
中長距離便をメインとしている運送業者様ではそもそもドライバーが会社に戻ってこないケースもあります。
この場合でも当然アルコールチェックして、電話で点呼して・・・ということを行うのですが、乗務前も乗務後も対面点呼をできない場合は乗務中に「中間点呼」が義務付けられています。
中間点呼のお話は少々複雑なので詳細は割愛しますが、このように点呼には様々なルールが存在しているのです。
点呼業務はあくまで運行管理業務の中の一部分の業務です。運行管理者はいろんなことに気を回さないといけないので大変なんですよね。
運行管理者が抱える点呼の問題点
点呼業務には様々な問題点が内在しています。今回は特に顕著な問題を二つピックアップさせていただきます。
点呼に時間をかけられない
点呼業務は乗務前・乗務後に点呼を行うわけですが、沢山いるドライバーの点呼を少数の運行管理者と補助者で裁かないといけないわけです。
例えば、1件あたりの乗務前点呼の処理時間を記載してみたいと思います。
大まかに内容を書くとこんな感じで時間がかかります。1件と書きましたが実態はドライバー1人当たりの処理時間とほぼイコールと考えてよいかと思います。
因みに5分25秒は点呼としては短めだと思ってください。
運送会社さんによってはここに15分くらいかける企業も中にはあります。
しかし、あまりここに時間をかけると出発が遅れるし、出発が遅れるならドライバーを早めに出社させる必要があるし、早めに出社させると拘束時間が長くなるので給料にも影響がでるし、拘束時間を超過しないようにより配慮が必要になります。
因みに勿論、1対1での点呼ではなく1対複数人の点呼と言う方法もありますが、例えばアルコール測定はアルコール測定器による測定が義務付けられているので最低でも10秒/人程度は時間がかかります。
50人のドライバーがいたら、アルコール測定全てを捌き切るのに単純に50人×10秒=約8分弱かかる計算になります。
勿論、アルコール測定器が複数あれば時間短縮になりますが、イニシャルコストとランニングコストがかかるので単純に増やせばいいというものでもないのです。
安全運行をするためにも重要な点呼業務ではありますが、実態として時間をかけられないという問題があります。
そもそも運行管理者が足りない
下の表は全日本トラック協会作成の『運行管理業務と安全マニュアル』より抜粋した表です。
こちらの表を見て分かると思いますが、対象営業所に所属している車両の台数に依存して運行管理者数が決定します。
車両総台数が29台だったとしても、営業所が2つあって片方が27台、片方が2台だった場合に運行管理者は最低2人必要になる計算です。
2台の車両のために1人の運行管理者を置くのはいいとして、2台のうち1台は深夜出発のためにもう一人雇わなければいけない・・・なんてケースも想定されるのです。
単純な意味での人件費もかかるし、運行管理者の資格を持っている人材を探す必要もあるので運輸運送事業者の悩みの種となっているのです。
費用の問題ではない?「点呼の重要性」
前章の課題2つに共通している問題点は「人が足りない」ということなんです。
人が足りないなら増やせばいいと思われる方もいるかもしれません。実はそんな簡単な話でもないのです。
トラック運送業は一つ大きな問題を抱えています。
車両1台当たりの利益率は3%~5%程度と決して高くはないのです。
つまり、単純に人を増やせば点呼の問題が解決するかというと、人件費の問題があるので簡単ではありません。
車両1台増やしてドライバーを増やせば、儲けに繋がるかもしれませんが、運行管理者を増やしても直接的な利益につながりづらいのが現状です。
では、人件費がでないから点呼をしなくてよいのか?
答えは「否」です。
勿論、点呼業務は義務なので無視できないという側面もあるのですが、それを除いても点呼には企業が重要視するべき3つの要素が含まれています。
- 安全の担保
- 品質の担保
- 正確性の担保
安全の担保では当然、ドライバーの健康面や車両整備状態など運転に係わる危険要素の排除、品質の担保ではドライバーの服装身だしなみ、免許証携行や必要書類などの基本的な部分の確認、そして正確性の担保では配送時間やルートの確認、道路状況・天候の把握など運行に必要な情報の理解といった要素が含まれています。
つまり、点呼業務では運行に係わる必要な情報や確認事項が詰まっているので、点呼業務の手を抜くと「会社の信用」やその先にある「売上」に悪い影響を与える可能性があるのです。
そのため「点呼をやらない」という選択肢はあり得ないのです。
では、利益を確保しつつ点呼の質を良くするためにはどうしたらよいのか?ここで登場したのが「IT点呼」だったり、全く新しい考え方の「ロボット点呼」という概念なのです。
IT点呼の仕組みとは?
IT点呼はGマーク(安全性優良事業所)を取得している同一事業者内の営業所間で、テレビ電話・アルコール検知器を利用した疑似対面点呼のことを指します。
第2章の「そもそも運行管理者が足りない」問題をこれで解決することができるので、活用なさっている運送事業者様は沢山あります。
IT点呼の長所は閑散時間帯に運行管理者の点呼業務を他営業所のドライバーとつなぐことで効率よく無駄なく行える点にあります。
ドライバーが所属営業所に赴く必要もなければ、少人数のドライバーのために運行管理者が深夜早朝に営業所に待機している必要も無くなるのは画期的と言えます。
特に2017年にIT点呼は大幅な要件緩和が入ったため、A営業所-A車庫間で行っていたIT点呼もやむを得ない事情がある場合は、B営業所-A車庫間で行っても良いというルールが追加になったほか、従来であればIT点呼で行った点呼記録簿はドライバーが所属している営業所に送る必要がありましたが、クラウドサーバに保存されていれば所属営業所にある必要はないという要件緩和も入っています。
この業界も大分IT化が進んできたな・・・と実感できる要件緩和に感じました。
さて、当社のお取り扱い商品の中にもこういった要件緩和に対応したIT点呼製品がございます。
それがテレニシ株式会社の「IT点呼キーパー」です。
IT点呼キーパーはクラウドサーバを経由して、営業所間をつなぐ仕組みの製品です。
インターネット回線があれば専用のVPN回線は必要なくテレビ電話での点呼が可能です。
PC対PCだけではなく、PC対スマホでIT点呼もできるほか、点呼したデータはクラウドサーバに保存されているので点呼記録簿を出力しようと思えば、いつでも専用サイトから可能です。
電波の弱い場所に車両がある場合は、アルコール測定結果を送信だけして、電話点呼をする・・・といった使い方も想定されており、柔軟性の高さも抜群です。
後、IT点呼系の製品の中だと初期導入費用や月額利用料も安いので導入しやすいという特長もあります。
最近のIT点呼キーパーの使い方でたまに聞くのが、1営業所で運用するという使い方です。
折角のIT点呼なのに何故1営業所で使うのか聞いてみたところ、このシステムは使い勝手が良く、必要な情報もしっかり記録されるので「対面点呼」システムとして使われるケースが増えてきているのだそうです。
IT点呼システムを対面点呼で使うという発想はなかったので、面白い着眼点だと思います。
自動点呼をうまく活用しよう
安全を確保したいし、ドライバーに適切な指示も与えたい。でも、時間も人も足りません!
IT点呼はとても便利なんですが、沢山のドライバーをまとめて捌くための仕組みではありません。
課題のもう一つに『点呼に時間をかけられない』という問題点がございました。
前述の通り、解決するにはコストと人材不足の問題があります。
そこで自動点呼の出番となる訳です。2024年6月現在では、業務後に限り認められている形ですが、運行管理者が立ち会う必要がなく点呼を完了出来るので人手不足の事業者の救世主となり得ます。
こちらの記事で自動点呼について紹介しているので合わせてご覧ください。