燃料サーチャージの計算と届け出の方法とは?
国土交通省や全日本トラック協会から運送会社に向けて送られている強烈なメッセージに ・標準的な運賃 ・燃料サーチャージ というキーワードがあります。この背景には世界情勢に端を発する原油高騰による燃料価格の上昇があります。実際の上がり幅を見て見ると下記のようになっています。
軽油価格
2022年10月:143.6円/L
2020年05月:101.6円/L
なんと、直近3年間で見たときに軽油最安値の2020年5月から42円も上昇していることが分かります。とある運送業者様のお話ですが、燃料費が1円上がると年間の経費が100万円は上がると伺ったことがあります。
その話を聞いて衝撃をうけたのを覚えていますが、その理屈で計算すると42円上昇だと単純に計算して、1年で4,200万円……!? ということで、今回は燃料サーチャージのお話をしたいと思います。
標準的な運賃と燃料サーチャージは何が違うのか?
「燃料サーチャージ」と「標準的な運賃」は別物です。
標準的な運賃告示は国土交通省が運送会社向けに各運輸支局別・車種別・距離単位でまとめた運賃タリフです。
この車種で関東圏でこのくらいの移動距離なら、このくらいの価格設定が妥当!を一覧にしたものと解釈ください。
さて、ここでの「標準的な運賃」とは純然たる運賃を指します。そのため以下は含まれません。
・積込/取卸料 ・附帯業務料 ・有料道路利用料 ・フェリー利用料等 ・燃料サーチャージ
高速道路やフェリー料金などは立替金なので完全に別枠。積込み・取卸料や付帯業務も作業費用です。 燃料は前述の通り増減するので、標準的な運賃には含まないという考え方です。
「運賃に関係ないものは含めちゃダメよ」というメッセージなんでしょうね。
事実こういった作業費用などをコミコミ価格でお仕事をもらっている会社もあるのは事実です。
運賃・作業費・交通費・燃料費、まとめて〇〇円!なので、価格体系はシンプルですが原価が分かりづらくなるという欠点があります。 原価がわからないと、値上げの理由が不明瞭なので価格交渉の土台にも立てなくなります。
運送業界は他業種と比較すると長時間労働、低賃金、そしてドライバー不足という状態に陥っています。そういった意味でも今後は労働環境改善のためにも価格交渉は不可欠です。
とはいえ、得意先との価格交渉は簡単ではないですよね。そういう点では、理由が明確で原価もわかりやすい、燃料サーチャージから価格交渉をしてみるのがまずは第一歩だと思います。
燃料サーチャージとは?
燃料サーチャージは燃料費の上昇、下落のコストに応じて増減分を別建ての運賃として請求する仕組みのことです。
燃料費の高騰は運送会社の企業努力だけではどうにもならない内容のため、得意先との価格交渉の土台に乗せやすい…というより、乗せるしかない内容です。いつ価格交渉するのか?今でしょ!と個人的には思います。
燃料サーチャージという言葉も意味もなんとなく知っているけど、なんか面倒そう!……という方は一定数いらっしゃると思います。
ということで、燃料サーチャージの計算方法を解説していきたいと思います。
燃料サーチャージの計算方法って難しい?
燃料サーチャージの方法は国土交通省から2通りの計算方法が提示されています。
①距離制運賃 ②時間制運賃
①距離制運賃の計算式 燃料サーチャージ額(円)=走行距離÷燃費×算出上の燃料価格上昇額(円 /ℓ)
②時間制運賃の計算式 燃料サーチャージ額(円)=平均走行距離÷燃費×算出上の燃料価格上昇額 (円 /ℓ)
距離制は走行距離を燃費で割って計算しているのに対して、時間制は1日(8時間or4時間)の平均走行距離を燃費で割って計算しているので「平均燃料消費量」となっています。
上記に加えて基準としている燃料価格、車両の大きさの違い(2t車、4t車…)による燃費の設定や燃料上昇額を何円刻みにするのかなどのルール付けが必要です。
さて、参考までに実際に計算式を当てはめたサンプルをご紹介したいと思います。
【距離制運賃の算出条件】 ・基準軽油価格:90円、刻み幅10円) ・現在の軽油価格:142.6円(2022/10時点) ・算出上の軽油価格:145円 ・対象車両:10t車、燃費:4.0km/ℓ ・実車走行距離:200km
①距離制運賃での計算例 走行距離(実車走行距離200km) ÷ 燃費(4.0円/ℓ) × 算出上の燃料価格上昇額(145円-90円/ℓ) = 燃料サーチャージ費用 2,750円
計算は分かっていればそんなに難しくはないんですよ。
当社のお客様の中には計算機を片手にサーチャージ額を計算し、上乗せされている方もいらっしゃいます。
とはいえ、ある程度の慣れが必要だし何より面倒ですよね。
トラックメイトPro4で燃料サーチャージのシミュレーションができる!
当社の製品「トラックメイトPro4」は燃料サーチャージのシミュレーション機能を搭載しています。
その名も燃料サーチャージ算出・試算機能(そのまんまですが)です。
前章でお伝えした様々な条件を設定するだけで、距離制運賃・時間制運賃のシミュレーション額を算出してくれます。車両重量に合わせて、サーチャージ額をサクッと出してくれるので便利です。
燃料サーチャージを適用した場合は30日以内に地方運輸支局に運賃料金設定(変更)届出書の提出が必要です。
何故かというと、燃料サーチャージは別建ての「運賃」という扱いのため、運賃変更扱いになります。そうは言っても「届出書の作り方がよくわからない…」という方もいらっしゃると思います。
そんな人向けに燃料サーチャージ算出・試算機能には運賃料金設定(変更)届出書のサンプルを出力する機能も搭載されています。
具体的にはこんな感じの設定をします。
すると、こんな感じで届出書セットをサンプルで出力してくれます。
・運賃料金設定(変更)届出書 ・燃料サーチャージの適用法 ・距離制、時間制の運賃上昇額一覧
ちょっと便利ではありませんか?
余談ですが、運賃料金設定(変更)届出書は運輸支局によって多少フォーマットが異なることがあるので、出力した届出書をベースに各支局のフォーマットに合わせて書類作成するのがオススメです。
ここまで準備されていれば届出書もかんたんにできますよね。
さらに燃料サーチャージシミュレーション機能も搭載されているので便利ですよ。
ぜひ、燃料サーチャージの価格交渉、そして運賃値上げの交渉にご活用いただければと思います。
請求書作成や経費管理でお悩みの方はぜひトラックメイトPro4をご検討ください。
運輸運送業は日本のインフラを担う大事なお仕事です。
物流が滞れば、経済も停滞します。
エッセンシャルワーカー(生活に必要不可欠な職業)として、もっと大事にされるべき!
と、この業界に携わるものとして声を大にして言いたいです!
まぁ…ね…いろいろあるのは知っていますけども(モゴモゴ)
おっと、業界の闇に触れる前に退散したいと思います。