あおり運転の加害者にならないために
こんにちは。タイガーの井上です。あおり運転の厳罰化や、一定の違反歴がある75歳以上への実車試験導入を盛り込んだ改正道交法が2020年6月2日、衆院本会議で可決、成立されました。
タイガーのブログでも過去に事故に関する記事はいくつかご紹介させていただいておりますが、いよいよ「あおり運転」に明確な定義と罰則が用意されたように思います。
交通事故の先にある悲惨な状況とは
あおり運転の厳罰化の背景とは?
以前、危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪の記事をかかせていただいておりますが、その中でもあおり運転についてのお話を書かせていただいております。
あおり運転に該当する明確な基準はないものの「危険運転致死傷罪」は、自動車の事故において相手方を死傷させるような事故であり「妨害運転」に該当する行為であれば、適用できる唯一の法律でした。
とはいえ、過去に妨害運転で危険運転致死傷罪が適用された例は殆どありません。
その理由の一つに「人が死傷しているという事実」が無いと適用できないという点、もう一つに「妨害運転によって第三者の人間が死傷しているという因果関係」が証明できないと適用し辛い法律のためです。
つまり、あおり運転をされた結果、事故が起きたわけでもなく、人を死傷させたわけでもない、強いていうなら「怖い思い」をしただけのものを取り締まることが非常に難しかったわけです。
勿論、あおり運転をする方の傾向を見ると「車間距離が不適切」だったり、「急ブレーキ」、「危険なタイミングでの車線変更」など「安全運転義務違反」に該当する行為もあるので、捕まえることもできなくはないのですが、この手のものは現行犯じゃないと捕まえづらいという側面もあるのでいよいよ法改正の必要性が出てきたわけです。
厳罰化の時期と具体的な内容
いつから厳罰化されるのか?
ここが皆さんの一番の関心事だと思います。
いつから厳罰化されるのかですが、2020年6月末(今月です!)と言われております。
改正道交法が2020年6月2日、衆院本会議で可決、成立しているわけですから、少なくとも年内には…と思っていたのですが、予想以上に早そうです。
道交法改正が可決・成立したのが2019年5月28日で適用になったが12月1日なので、これが如何に異様なスピード感を持って実施されているのかが分かります。
妨害運転の大まかな定義
今回、一番特徴的なのは妨害運転を10類型の違反ということで定義したことです。
以下がその妨害運転に該当する10類型です。こちらは警察庁のHPに行くとダウンロードが可能です。
ただ、こちらの内容は結構物議を醸している部分もあります。
明確に数値化し辛い違反内容が含まれているのと、この違反内容に該当しない行為での妨害運転が存在した場合にどのように対処するのか、疑問は残ります。
それに加えて、妨害運転うんぬんは関係なくこの10類型の違反は元々交通法規で存在する違反に該当するので、妨害運転とそうではない違反とに切り分ける基準がどこなのかは気になるところです。
厳罰化の内容は?
厳罰化の具体的な内容は結構強烈です。こちらも警察庁のHPからダウンロードできる資料に書かれております。
あおり運転に該当する罰則はご覧の通り2つあります。
第一段階は10類型の違反に該当していること、第二段階は10類型に該当しかつ「高速道路で車両を停止させる」などの極めて危険な行為の場合に適用されます。
どちらも共通しているのは一発免許証取り消しと言う点と、免許証の再取得までに最低2年以上、最大10年間取得ができなくなる点、そして懲役または罰金がある点です。
これであおり運転(妨害運転)は無くなるのか?
厳罰化というのはある意味最終手段の一つと私は思っています。
「危険運転致死傷罪」、「過失運転致死傷罪」、「ながら運転の厳罰化」、そして「妨害運転の厳罰化」で自動車事故にまつわる運転者側の過失や故意にあたる部分の事故の厳罰化は極まった印象があります。
厳罰化をすると一定の効果は得られます。
当然、ニュースを見ている日本国民の中に自動車事故における捕まった時のリスクは間違いなく刷り込まれたと思います。
その反面で、「ながら危険な運転をしている」、もしくは「他人を危険な目に合わせている」ドライバーは「捕まったら人生おしまい」という現実に、「どうせ捕まるならもっと派手にやってしまえ」という人も一定数出現したりする可能性があります。
実際に2018年7月に大阪府堺市で発生したあおり運転の事故では、大型バイクへの執拗な追跡の後に故意に自動車を後ろから追突させ、大型バイクのドライバーを死亡させた痛ましい事故がありました。
このドライバーは追突後に「はい、終わり―」という音声がドライブレコーダーに残っていたことも話の争点に上がりました。
結果、自動車事故による刑事罰の適用ではなく、「殺人罪」が適用され懲役16年の判決がくだされたことでも注目を集めた本当に悲しい事件でした。
これは同時に厳罰化による事故削減効果の限界に到達したとも取れます。
あおり運転の加害者にならないために
運転中は第三者から受けるストレスを受け流すことが大事なのかなと個人的には思います。
こういった職業柄のため、当社製品をお使いいただいているユーザー様に安全運転セミナーを行ったりすることがございますが、実際にあおり運転に遭ったならば「あおり運転をしてきているドライバーを相手にしないこと」と受講者の方にはお伝えしております。
相手をすれば、さらにヒートアップするので妙な正義感は出さないようにするのが一番です。
また、こちらが通常の運転をしているつもりでも、相手側から見て「あおり運転」をされているととらえられないように、十分な車間距離を緩やかなブレーキを心掛けるように説明をしています。
自身だと判断がしづらい、客観的な車間距離(車間秒数)は難しいですよね。
こういった車間距離などは機械に任せることで対処ができるので、衝突防止補助システム「Mobileye580」や
安全運転義務違反に該当しそうな「わき見」、「うつむき」と言ったドライバーの挙動監視をしてくれる「Nauto」などを取り付けることで意図せずあおり運転をしていた、ということを防ぐ手段としても有効なので、こういった対策をとるのも一つの手だと思います。
機械は主観では物を語りませんし、いつでも冷静にドライバーへ危険を警告してくれるパートナーと考えると気が楽かもしれません。
そう、ここまで読んでお気づきかと思いますが、実はこの法令改正での最大のポイントはあおり運転が他人事ではなくなった点にあります。
自分は「やっていない」ではなく、「やっているかも」という意識を持って行動をしないと、ある日突然、自分の身に降りかかるかもしれません。
この手の記事を書くといつも思うのですが、一層のこと早く自動運転の車両が世に出れば悲しい事故も無くなるのではと思うことがあります。
自動車運送事業者のあおり運転 行政処分基準追加
国土交通省からより自動車運送事業者のあおり運転に関する行政処分基準が追加になるというニュースが流れています。
こちらの記事の中でも記載されていますが、11月13日にパブリックコメントの募集を締め切り、早ければ11月27日に施行予定となるようです。
国交省、あおり運転を行政処分基準に追加|Logistics Today
実は、最近も自動車運送事業者のあおり運転について、国土交通省から事業者に対して、指導監督徹底の依頼が公開されています。
トラック運転者のあおり運転事故の発生を踏まえた指導監督の徹底について|国土交通省
下記サイトにて、あおり運転の規制内容と罰則が紹介されています。
あおり運転の罰則とは? 「妨害運転罪」を徹底ガイド|ベンナビ交通事故