アンケートで判明したプロが重要視する〇〇事故!原因と対策は?
運輸運送業の管理者が特に気にしている安全対策のポイントって気になりませんか?同業者であれば、尚のこと他の会社で実施されている安全対策には興味があるのではないでしょうか?
今回は「第一回タイガーオンラインセミナー」のアンケート結果を元に、プロが気にする安全対策のポイントを抽出してみました。
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車両の安全対策で管理者の方が気にしているポイント
アンケート結果をご紹介する前に、まずは運輸運送業における発生しやすい事故状況から紹介していきたいと思います。
国土交通省の事故データから見る実際の事故の傾向
まずは国土交通省自動車局が毎年報告書としてあげている『自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(令和元年度)』に記載されているトラックの行動類型別事故件数の割合です。
基本的には「発進」「加速」「直進」「減速」と、真っすぐ走っている時の事故が一番多いです。
これは車の基本性能で言うところの「前に進む」が一番操作時間が長いので致し方ないとは思います。
その後に「右折」「左折」「後退」…と続きます。
しかし、操作時間が短いはずの右左折後退がそれなりの割合を占めているのは注目すべき点です。
アンケート結果から考察する運輸運送業の管理者が考える安全対策とは?
前振りが少々長くなってしまいましたが前章の結果を踏まえて、オンラインセミナーで収集したアンケートの結果をご紹介いたします。
アンケートでこのような質問をしました。
現在の車両の安全対策として、重要度が高いものはどれになりますか?
以下がその結果になります。
個人的にはちょっと意外な結果になった印象があります。
バックが最も多く、直進操作に該当しそうな車間、あおり運転が2番目でした。
つまり、運送事業者様の多くが後退操作への不安を感じているという結果なのだと感じました。
さて、次の章でアンケートから考える安全対策を記載していきたいと思います。
どうすれば、車両の事故が無くなるのか?
では、アンケートの結果を元に、考察した結果を紹介していきます。
バック事故(24.37%)
安全対策で重要と考えている企業が1番多かったのは「バック事故」でした。
国交省のデータによると【直進・発進時】の事故件数がバックよりも圧倒的に多いので、前方への注意喚起や指導に注力したいという結論になるのではないかと予測していたため少々意外でした。
この結果から以下が考えられます。
- 直進・発進時の危険運転については、しっかり指導教育がされている
- 安全対策機器の導入(例:衝突防止補助システムMobileyeのような製品)
- トラックにも自動ブレーキ搭載が進んでいること
「直進・発進」への要素よりも「後方や死角・側面・巻き込み」などの事故が現状の安全機器類でカバーしきれない部分があるので、そこを見据えての「バック事故」なのではないかと思います。
トラック事業者やバス事業者でのバック事故は主に「駐車場」での事故やトラックターミナル内での荷積み場所への接地で衝突するケースが考えられます。
以前公開した記事に一つ回答があります。
バック事故を防ぐための絶対的に避けることができないのが「確認」です。
特に大型車両ばかり保有している企業ではそもそも社内のルールでバックを禁止していたり、車両から降りて後方を確認してからバック…なんてルールを採用している企業もあるくらいです。
機器類による対策で言えば、バックモニターや死角に対してバックソナーを付けている企業もあるでしょう。
バックはトラックだけではなく、バス、タクシーでもある程度の事故の割合を占める悩みの種というのが分かる結果でした。
車間・あおり運転(21.85%)
次はやはりというべきか、まさに直進・発進に該当する部分です。ニュースの衝撃映像として扱われやすい「あおり運転」の影響もあるのではないでしょうか?
本人が車間を十分に取っているつもりでも、実際にはかなり車間が近い場合もあります。
こちらの記事で紹介していますが、あおり運転には10類型というものがあり、十分な車間距離が無い場合にあおり運転罪に該当すると記載されています。
あおり運転への対策の一つに「衝突防止補助システムMobileye」を活用することで第三者的な観点で機器が車間距離を秒数(前方車両までの距離を秒数に置き換えたもの)で知らせてくれ、表示や警告音を目安にドライバー自身が車間距離を矯正していくという方法が確実ではあると思います。
余談ですが、Mobileyeが無くても一応車間距離を把握する方法はあります。一般道の白線は長さが5m、白線と白線の間の空白が5mです。高速道路なら白線は8m、空白が12mと決まっています。
ドラレコが必須になりますが、これを使って前方車両との距離を白線と空白で大まかに把握することはできます。例えば、こういうドラレコの動画があったら、白線1個半と空白1個なので13~14mの車間距離と推測できます。
後はこの車両が約時速30kmで走行しているので、前方車両との車間秒数は最低2秒程度ないとゆっくり停車ができないので…
- 時速30km=秒速8.3m
- 秒速8.33m×車間秒数2秒=16.7m(最適な車間距離)
- 14m(実車間距離)-16.7m=-2.7m
となり、これが最適な車間距離ではないということを客観的に証明ができます。これは結構強引な計算方法(速度は可変なので)ではあるのですが、分析するという意味では悪くない方法なのでドラレコ映像で一度お試しください。
居眠り、漫然運転(21.85%)
実は漫然運転が事故の大半を占めているのではないかと、個人的には疑っています。
居眠り自体は多くはないんですが、この「漫然運転」がポイントなんです。こちらの記事でも扱っておりますが、居眠り運転、漫然運転、ながら運転でいずれも共通していることがあります。
それは前を見ていない、もしくは対象物を認識していない状態であることなんです。これは運送事業者の方というより一般企業の営業車やサポートカーなどにありがちなのですが、赤信号停止から発進時の事故が特に多いです。
理由は下を向いてスマホをいじったり何か別のものを注視したりしながら、周りの自動車が動きだしたのを目の端でとらえ無意識に発進して、前方車両に追突するというケースが散見されます。
最近はドライバーの挙動をカメラで監視して、「よそ見」、「居眠り」、「携帯操作」を行ったら、AIが危険挙動を注意喚起をしてくれるAIドラレコ「Nauto」という製品もあります。
こういった機器を活用することで事故を未然に防ぐ…なんて方法もあります。
特に「スマホのながら運転」は罰則も2019年12月より厳罰化されているのでドライバーへの教育訓練も必要です。
歩行者、自転車事故(14.29%)
今、一番対策が難しい事故の一種です。個人的には対歩行者よりも対自転車の方が圧倒的に危険だと思っています。
とある一般企業に安全運転講習をさせていただいているのですが、ドライブレコーダーの過去半年間の動画データをチェックしたところ、145件のイベント動画の内、およそ1/3にあたる約50件が自転車が関係しているヒヤリハット動画でした。
このお客様は市街地や路地を走ることが多く、その関係で自転車関連の危険動画が多くあります。殆どの動画に共通しているのが、自転車が交通法規を守らないことが多く、予想のつかない挙動をします。
- 一時停止しないで突然飛び出す
- 自動車の左側スレスレを並走する
- 逆走をする
- 道路を突然横断する
- 歩道からいきなり車道に出てくる
- 自動車と一緒に右折する
よくあるパターンとしてはこの辺でしょうか?あまりに動作が読めないので、安全運転講習でお伝えしているのが「自転車を見かけたら十分に距離をあける」ことです。
万全の対策がないのが悩ましいところです。
各自治体の条例に依存はしますが、全国各地で自転車は保険への加入義務付けが増えてきていますし、近いうちに自転車も免許制に移行されることもあり得るでしょう。
死角・巻き込み事故、側面事故(17.65%)
「死角・巻き込み」、「側面事故」は一つの項目にまとめました。
巻き込み、側面事故は大型の車両を保有される企業さまでは特に悩みの種ではないでしょうか?
大型のトラクタヘッドで後方車両と連結しているようなものは、左折する際に頭を一旦右に振ってから左にハンドルを切るという動作をするため、車両の左側面に死角ができてしまう事が悩みの種とお客様に聞いたことはあります。
昨今は自転車の危険運転もクローズアップされつつあるので、左側の死角の対策としてサイドカメラを使って警報を鳴らすような機器も登場を始めています。
目視で確認できない部分なので、こういった機器の活用と左側の死角に対する教育などが必要なのではないでしょうか。
未然に防ぐなら「ドラレコ」を活用した教育が有効
どうすれば事故がなくなるのか? 結局行きつくのはここです。
人間が運転している限りは事故「0」にするのは難しいと思います。
ということで、事故「0」に近づけるためのポイントして、安全機器に対しての正確な知識(安全に関しての限界は必ずあります)を踏まえた上での活用と、ドライバー様自身の意識の改革が必要です。
まず、自動車の運転操作で人間は3つプロセスをグルグル循環しています。
認知 → 判断 → 動作 → 認知…
一番怖いのは「認知」の部分です。
前章の③でお話いたしましたが、私の経験則上漫然運転が多い人には決まった危険挙動が見られます。
- 一時停止しない
- 左右を確認しながら道路に出ているのに、車両が左から来て驚く
- 車両停車中にスマホを操作する
- 前を見ているようなのに急ブレーキする
共通しているところが何かというと、注意すべき対象が見えていないということなんです。
安全運転セミナーを行うため、沢山動画は見ていますが事故を起こす方はこういった特性があるみたいです。
「漫然運転」を「集中運転」に変えるにはやはり教育が必要です。
少し自社製品の紹介になりますが、当社の製品であるEV-WITNESS / WITNESS4-S2、WEBドラサービスV2であればバック時のイベント、左折時のイベントも取得(※一部のユーザーでのみ使用)できるので、死角、側面の動画も集めやすかったりします。
安全機器+デジタコ、ドラレコの活用で教育指導の内容も具体化され指導のしやすい世の中になってきています。
特に通信して動画を送信してくれる類のデジタコ・ドラレコであればヒヤリハット動画も集めやすいのでオススメです。