自動点呼、調べてみたら意外と大変でした!

自動点呼、調べてみたら意外と大変でした!

乗務後自動点呼制度が解禁になりましたね!点呼の無人化(セルフ点呼)は物議を醸すところはありますが、昨今の人材不足や2024年問題対策で人件費を抑えようと思うのは人の常。

「よーし!さっそく自動点呼始めたるわぁ!」と思っていませんか?

ちょっと待ってください!まずは、下調べです。遠隔点呼の時もありましたが内容を理解しないまま話を進めて壁にぶち当たる…いや、激突している方を見たことがあります。

今回は乗務後自動点呼の条件・要件に加えて、導入のメリット・デメリットをまとめてみましたので、是非ご覧ください。

自動点呼とは?ロボット点呼と何が違うの?

国土交通省【別紙】乗務後自動点呼概要より抜粋

「そもそも自動点呼って何?」という方もいると思いますので簡単に説明します。

乗務終了後に運転者が「ロボット」や「システム」を介して行うセルフ点呼のことを「自動点呼」と呼びます。

「ほぼ」無人で点呼をできるのが自動点呼の特長。因みに現時点(2023年1月時点)では、自動点呼は条件付きとなっています。

  • 乗務後点呼のみ自動点呼が可能
  • 点呼ができない状態に備えて運行管理者がすぐに対処できる場所にいること

これが「条件付き」「ほぼ無人」という表現をしている理由です。

さらに自動点呼システムは機器認定制なので、それっぽい製品ならOKというわけではありません。認定を受けた製品である必要があります。

その上で乗務後自動点呼を実施したい企業は陸運支局への申請が必要となります。

本制度は2023年1月から陸運支局で受付開始、申請が通れば乗務後自動点呼の運用を開始することができます。

因みに実際に自動点呼を運用開始できるのは最短で2023年5月1日~となります。

補足ですが、「自動点呼=ロボット点呼」と思っている方も多いと思いますが、ロボット点呼は「ナブアシスト」社の登録商標なので製品名であって制度の名前ではありません。

AIやシステムによる実質的な無人点呼を想起させる制度名が「自動点呼」なのです。

申請が必要なのは「IT点呼」しかり、「遠隔点呼」しかり、「自動点呼」もしかり…ですよ。

「申請が必要ということは、遠隔点呼みたいにいろんな要件があるんじゃないの?」と思った方、鋭い!

YES!ございます。

乗務後自動点呼の3つの要件

office

「遠隔点呼」の記事でも書きましたが、「乗務後自動点呼」にも3つの要件があります。

  • 機器・システムが満たすべき要件
  • 施設・環境要件
  • 運用上の遵守事項

要件の中に書かれている項目数が多いので、タイトル部分だけを抽出してみました。

要件のタイトル部分をタップ(クリック)すると内容の詳細表示もできます。

【乗務後自動点呼に使用する機器・システムが満たすべき要件】

1.乗務後自動点呼に関する基本要件
運転者の酒気帯びの状況に関する測定結果及び運転者が測定を行っている様子の静止画又は動画を、自動的に記録及び保存すること。
自動車、道路及び運行の状況、交替運転者に対する通告、その他の事項について、運転者が口頭で報告し、当該報告内容を電磁的方法により記録すること。また、運転者が口頭で報告を行うにあたり、対話形式で報告を行う機能を備えることが望ましい。
運行管理者等が伝えるべき指示事項を、運転者毎に伝達する機能を備えること。
運転者毎の点呼の実施予定、実施状況、実施結果を、運行管理者等が確認できる機能を備えること。
2.なりすましの防止
事前に登録された運転者以外の者が点呼を受けられないように個人を確実に識別できる生体認証機能(顔認証、静脈認証、虹彩認証等)を有すること。
酒気帯びの状況に関する測定時には、点呼を受ける運転者以外の者が測定できないように個人を確実に識別できる生体認証機能(顔認証、静脈認証、虹彩認証等)を有すること。
3.運行管理者の対応が必要となる際の警報・通知
運転者の酒気帯びが検知された場合には、運行管理者等が気付くように警報、通知を発した上で、点呼を完了させないこと。
運転者毎に点呼を実施する予定時刻を設定することができ、予定時刻から一定時間を経過しても点呼が完了しない場合には、運行管理者等が気付くように警報、通知を発すること。
当該点呼に必要な全ての確認、指示、判断、記録が正常に行われない限り、点呼を完了させないこと。また、自己診断機能を備え、故障が発生した場合には故障個所、故障内容を表示するとともに、運行管理者等が気付くように警報、通知を発した上で、当該故障が解消されるまで点呼を実施できないようにすることが望ましい。
4.点呼結果、機器故障時の記録
点呼を受けた運転者ごとに、次に掲げる点呼結果を電磁的方法により記録し、かつその記録を1年間保持できること。
  1. 当該点呼に責任を持つ運行管理者等の氏名及び点呼を受けた運転者の氏名
  2. 運転者の乗務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
  3. 点呼日時
  4. 点呼方法
  5. アルコール検知器の測定結果及び酒気帯びの確認結果
  6. アルコール検知器の使用時の静止画又は動画
  7. 運転者が点呼を行っている様子の静止画又は動画
  8. 自動車、道路及び運行の状況
  9. 交替運転者に対する通告
  10. その他必要な事項
当該機器の故障が発生した際、故障発生日、時刻、故障内容を電磁的方法により記録し、その記録を1年間保持できること。
電磁的方法にて記録された点呼結果、機器の故障記録の修正ができないこと、又は修正をした場合であっても修正前の情報が残り消去できないこと。
電磁的方法にて記録された点呼結果、機器の故障記録を出力できること。出力について機器・システムで保存された内部形式のまま大量一括に、CSV形式の電磁的記録として出力できること。

【乗務後自動点呼を実施する場所が満たすべき施設・環境要件】

施設・環境要件
なりすまし、アルコール検知器の不正使用等の防止及び所定の場所以外で乗務後自動点呼が実施されることを防止するため、乗務後自動点呼を実施する運転者の全身の様子を運行管理者等が随時確認できるように監視カメラ等が適切に設置されていること。

【運用上の遵守事項】

1.事業者、運行管理者等に係る遵守事項
事業者は、乗務後自動点呼の運用に関し必要な事項について、あらかじめ運行管理規程に明記するとともに、運転者、運行管理者等及びその他の関係者に周知すること。
事業者は、乗務後自動点呼に用いる機器を常時有効に保持すること。常時有効に保持とは、正常に動作し、故障がない状態で保持しておくことをいう。このため、機器の製作者が定めた取扱に基づき、適切に使用、管理及び保守するとともに、定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用しなければならない。
事業者は、所定の場所以外で乗務後自動点呼が行われるのを防止するため、乗務後自動点呼に用いる機器を持ち出されないように措置を講じること。
事業者は、機器の使用方法等について運転者、運行管理者等及びその他の関係者が適切に使用できるように教育体制を整備すること。また、運行管理者等は、緊急を要するような事態が発生した際の対応方法について乗務前点呼時等に運転者に周知すること。
運行管理者等は、各運転者の乗務後自動点呼の実施予定・実施結果を適切に確認し、点呼の未実施を防止すること。
運行管理者等は、各運転者に必要な指示を適切に行うこと。
運行管理者等は、各運転者に必要な指導を適切に行うこと。
事業者は、運転者が携行品を確実に返却したことを確認できる体制を整備すること。
2.非常時の対応
酒気帯びが検知された場合には、運行管理者等が適切な措置を講じることができる体制を整備すること。
点呼を実施する予定時刻から一定時間を経過しても点呼が完了しない場合には、運行管理者等が適切な措置を講じることができる体制を整備すること。
当該機器の故障等で乗務後自動点呼の実施が困難になった場合には、運行管理者等に申し出ることを運転者に指導するとともに、当該営業所で実施が認められている点呼を実施できる体制を整備すること。
緊急を要する報告については、運転者から運行管理者等に適切に報告できる体制を整備すること。
3.個人情報管理に係る事項
運転者の認証機能に必要な生体情報等、個人情報を扱う場合には、事業者が対象者から同意を得ること。

すごく端的にまとめると…。

  • 点呼結果等を電磁的に記録
  • 不正対策のためにしっかり個人認証
  • 運用ルール策定と教育・周知徹底
  • 非常時に運行管理者がすぐに対応できる体制

…こんな感じの運用が必要になってくるようです。

『なんか、結構手間かかるな』と思った方もいると思います。

次の章ではメリットがあるのか、ないのかを解説したいと思います。

乗務後点呼だけ?自動点呼はメリットがあるのか?

やや制約はありますが、乗務後点呼だけでも多少のメリットはあります。

■自動点呼のメリット

  • 点呼必須項目のヌケモレが少ない
  • 乗務後点呼を任せられる
  • 人件費削減になる

点呼のヌケモレが少なく済むのは自動点呼だけではなく、対面点呼やIT点呼システム等を利用した場合の共通の利点です。

文字通り機械的に必要項目を確認してくれるのでその点は安心です。

昼夜問わず運行管理者・補助者が常時いる事業所が一番恩恵を受けられます。

出帰庫が入り乱れるような時間帯のときに乗務後点呼を自動点呼システムに任せられるからです。

運行管理者が出庫にだけ注力できるので、効率良く点呼ができるし乗務後点呼用の人件費削減にもなります。

さて、一見良さそうな内容ですが現時点で鑑みると…それなりのデメリットもございます。

避けては通れない!?乗務後自動点呼のデメリット

自動点呼の要件を確認して、3つのデメリットが浮き彫りになってきました。

■自動点呼のデメリット

  • 運用開始までの準備が大変
  • 都度メンテナンスが必要
  • 完全無人化はできない

自動点呼の運用開始までの準備はかなりの負担です。

  • 自動点呼システムの導入
  • 監視カメラの導入
  • 自動点呼システムの運用ルール策定
  • 運行管理者・運転者への教育と周知徹底
  • 陸運支局への申請

これを見ただけで心折れてしまう方もいそうです。そうは言っても、乗務後点呼がほぼ無人に近い状態になるので運用開始までのコストや作業負荷は覚悟するしかありません。

どちらかというと、機器・システムのメンテナンス・維持の方が大変だと思います。

  • PC・機器類・システムのメンテナンス
  • アルコール測定器の校正・常時有効性の確認
  • 監視カメラの映像の確認
  • 自動点呼予定の運転手リストの作成・精査
  • 運転手毎の指示事項の作成・登録

対面点呼でもPCやシステム、アルコールチェッカーのメンテナンスは実施していると思いますので良いとして、問題は赤文字の作業が問題ではないでしょうか?

運用をするということは「=自動点呼を正常な状態で利用できること」になります。

監視カメラも定期的にカメラ映像を確認して正常に動作することを確認する必要がありますし、自動点呼の予定者リスト・指示事項の作成も新たな業務として加わります。

自動点呼システムを利用していれば、全部自動でシステムがやってくれるというわけではないので、新ルールの継続に苦労すると思います。

デメリットの最後は完全無人化はできない(2023年現時点では)という事実です。

夜間に乗務後点呼を数件実施する程度の事務所の場合は「自動点呼」+「運行管理者」の組み合わせが必要になるため、コストメリットが見出しづらいのです。

この場合は「自動点呼」よりも「遠隔点呼」の方が若干のコストメリットはありそうです。

国土交通省の資料を拝見する限りは完全無人化も計画に入ってはいるので、いずれ運行管理者が不要になるはずです。

でも…故障しない機械なんて存在するんでしょうか?個人的には完全無人化は不可能だと思っています。

故障したときのために予備の自動点呼システムを用意せよ…とか、とんでもない仕組みにならないといいのですが…。

自動点呼に対応している製品は?

まだまだ課題が多い自動点呼ではありますが、従来の点呼業務に一石を投じた「攻めた制度」であることは間違いありません。

自動点呼を早速試したいので、認定製品が知りたい!という方は以下。

国土交通省の運行管理高度化検討会に「認定を受けた自動点呼機器」の一覧が掲載されています。

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