バス業界のデジタル転換点
最近はあらゆるものがデジタル化されていますが、ついにデジタルのビッグウェーブが来たようです。バス業界に。「なーんだ、バスの話か」と画面を閉じずにぜひ最後までご覧ください。内容を見るとトラック業界もいずれはこうなる気がするので、今回は記事として取り上げております。
バス業界デジタル化のまとめ
バス業界に訪れているデジタル化とは何なのか。ちなみにバス(一般貸切旅客運送)での話になります。現時点ではパブリックコメントが出てただけなので「義務化決定」とは書きませんが、限りなく濃厚とお伝えしておきます。要点だけを書くと以下の事柄が挙げられます。
- 点呼・日報・運行指示書等の保存期間1年→3年
- 点呼記録はデジタル記録
- 動画による点呼記録保存(3か月)
- デジタコ装着
- アルコール測定時の測定している様子の画像保存
アルコール測定模様の画像保存はアルコール検知器の性能要件になりますが、事業者はそれを満たすものを使用しなさいということになります。この5つでなかなかの改革(デジタル化)が行われるのがおわかりいただけるかと思います。
そして、貸し切りバスにおいては、これらが全て義務化となります。
ではなぜ、これらが制度化されるのか。まず事の発端について軽く触れておきましょう。
貸切バス、なぜ今デジタル化?!
2022年10月13日に富士山のふもとで観光バスの横転事故がありました。この事故は、下り坂でブレーキが効かなくなりバスが横転。運転手・添乗員の計36人が死傷、というものでした。
本件は事故調査委員会の調査中のため、詳細が公表されていません。ネットで調べると色々良くないことが書かれている記事等が見受けられ、ここら辺がデジタルの義務化の遠因なのかなと勘繰ってしまいます。とはいえ、ここに言及するのは記事の本旨ではないのでこのくらいにしておきます。
義務化とする内容について「デジタルデータとして保管し、記録の正確性を担保したい」という国の狙いが見て取れます。
では、それぞれの義務化の内容についてみて見ましょう。
貸切バス、義務化の内容
今回の義務化(予定)で「事業者視点」として対応していかないといけないことを再度列挙しておきます。
書面及び記録の保存期間の延長
対象となるのは以下の記録です。
- 運送引受書(貸切バスにおいて、運送を引き受けた時に発行するもの)
- 手数料等の額を記載した書類
- 点呼の記録
- 業務記録(運転日報)
- 運行記録計による記録及び運行指示書
下の3つは、運送事業者様であれば、すぐにピンと来るものと思います。これらの保存期間が従来の1年から3年に伸びています。さらに点呼の記録に関してはデータとして記録しないといけません。
この部分に関して、原文を読むと【点呼の記録については電磁的方法による記録を義務付ける】とあります。解釈の仕方によって見解がわかれそうなところではあるのですが、紙に書く点呼記録簿は電磁的方法による「記録」にあたらないので、エクセルorシステム化しなさいと読むことも出来ます。
または紙だと劣化で可読性が下がってしまうため、点呼記録簿をPDFにすればOKということかもしれません。ここは制度化の際に注目が集まるところです。
動画による点呼記録の保存
点呼の記録を「動画」で3か月分残しなさい、ということのようです。事務所から出発して事務所へ帰ってくるようなケースでは、点呼機器を録画機能があるものにしたり別途点呼場にカメラを設置したりすれば対応出来るのでまだわかります。
しかし、遠隔地での電話点呼を行っている場合はどういう扱いにするんでしょうか。ここも上記と同様に、制度化の際に注目が集まるところです。
デジタコ装着義務化
今回の各種義務化の中で一番わかりやすいのではないでしょうか。チャート紙を入れて使うアナタコではダメということですね。読んで字のごとくなので、特に解説することはありません。
アルコール検知器の性能要件の強化
「運転者がアルコール検知器を使用した際の画像記録を保存する機能」というのが、アルコール検知器の性能要件に加わっています。言い換えると、アルコール測定時に画像記録が残らないタイプのアルコール検知器は使っちゃダメ、ということになりそうです。もしくはスマホと組み合わせて使うようなタイプの製品はOKということかもしれません。
どちらにせよ、今使ってるアルコール検知器を買い変えないといけない事業者も出てくることが想定されます。
貸切バス 義務化いつから?
今のところ(2023年9月現在)の予定では公布(正式な通達)が出るのが10月で施行が来年(2024年)の4月からとなります。そうなんです。あと半年しかありません。
なおデジタコの導入義務化に限ってはスケジュールが段階的になっており、来年の4月以降に新車として購入して新規登録する車両は、来年4月からの義務化。それ以外の車両は再来年(2025年)4月から義務化、という段取りになっております。
デジタル化の波はどこまで
バス業界に迫るデジタル化について記事にしました。今回はトラック事業者に直接影響はないですが、この辺の内容は制度化してもおかしくないので、取り上げた次第です。
2024年問題も迫る中、運送業界においてもデジタル化は切っても切り離せないキーワードとなりそうです。タイガーではお客様のIT化・DXの支援もさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。