【運送業界に迫る変化】飲酒・点呼・改善基準告示に関する行政処分の改正案

【運送業界に迫る変化】飲酒・点呼・改善基準告示に関する行政処分の改正案

「物流革新に向けた政策パッケージ(通称:物流政策パッケージ)」が提示されて以来、物流業界には様々な変化が起きました。

当初はぼんやりとした内容でピンときませんでしたが、公布から1年も経つころには、適正運賃収受、標準的な運賃の延長、運賃水準引き上げ、物流負荷の軽減、トラックGメン、物流DXの推進など、政策パッケージに連動する施策が着実に実行され、一定の効果が出始めていると感じます。

ニュースでも物流問題が取り上げられ、再配達を避ける意識を持つ消費者が増えているのは良いことです。数年前にはこんな意識を持つ人はいませんでした。

「まだまだ足りない」という方も少なくないとは思いますが、国がここまでテコ入れをしてきたのは驚くべきことではないでしょうか?

ただし、忘れてはいけないのは、これまで「なあなあ」で済ませていた事柄にも、今後は厳しく対処していくという国からのメッセージでもあるということです。

これは荷主だけでなく、運送会社も同様です。

皆さん、点呼をちゃんとやっていますか?改善基準告示を守っていますか?

今回は、点呼未実施や改善基準告示違反をした場合の処分厳罰化が検討されている・・・実はそんなお話です。

点呼未実施・勤務時間等告示違反とは?

基本的には元々存在するルールの厳罰化と、新設される予定のものと2本立てになっています。順番に解説していきます。

酒酔い運転、酒気帯び運転に関わる行政処分基準の強化(バス・タクシー・トラック)

こちらは飲酒運転に関連する行政処分の新法令案です。

まず、指導監督義務違反とは「酒酔い運転や酒気帯び運転が実際に行われた後に、それに対する指導教育が行われていなかった場合」に適用される法令です。

「アルコールに関する教育なんてやったことがない」という声もあるかもしれませんが、アルコール依存症や薬物依存に関する講習・教育をやってくれる「特定非営利法人ASK」という団体を利用するのも一つの手です。

因みにアルコール検知器メーカーがASKの公認インストラクターの資格を持っていることも多いので、相談してみるのも良いでしょう。

もう一つの「点呼の実施違反」は「酒酔い・酒気帯び運行が行われた場合において、点呼が未実施」の場合に適用されます。

処分の重さは先程の指導監督義務違反と同じですが、「指導監督義務違反 +点呼の実施違反」で300日車というように、ダブルで処分が下る可能性があります。

この改正案が如何に重たい内容かご理解いただけたでしょうか。

ところで余談ですが、「●●日車」・・・って表現わかりづらいですよね。

ぶっちゃけ、どうやって運行停止にしているの?

・・・を調べたところ、100日車であれば1台の車両を100日間、ナンバープレートの取り外しをして実際に運行できなくする仕組みのようです。

因みにその会社で保有している車両台数に応じて、100日車であっても、2台を50日ずつ止めなければいけないなどのルールもあったりするようです。詳しく知りたい方は、以下のサイトをご覧頂ければと思います。

https://ymd-unsou.com/syobun

勤務時間等告示違反(トラックのみ)

勤務時間等告示違反とは改善基準告示の中の拘束時間・休息期間に該当する部分の違反を指します。

勤務時間等告示違反とは、改善基準告示の中の拘束時間・休息期間に該当する部分の違反を指します。

未順守が5件以下の場合は従来通りですが、6件以上になると初違反で12日車、再違反で24日車と、15件なら初違反30日車、再違反60日車です。

この法改正案が「トラックのみ」で適用される点にメッセージ性を感じます。

余談ですが、2024年3月に開催されたタイガーのオンラインセミナーで行われたアンケートで、新改善基準告示についてどう思うかという問いに対して、「今後、しっかりとした対策をしていきたい」という意見が76%、対策の方法が分からず探っているが9%と回答をいただいております。(有効回答数:46件)

この結果はオンラインセミナーでアンケートに回答していただいた46件のデータなので、あくまでご参考まで。

もし、グラフのオレンジと青の回答の企業様で改善基準告示対策がまだできていないのであれば、今すぐ対策を検討するのが吉です。

法改正は大体の場合、待ってはくれませんからね。

点呼の未実施【処分量定の引上げ】 (トラックのみ)

またしても、トラックのみが対象でこちらも厳罰化。

これを見て「酒酔い・酒気帯び運転のところにも点呼未実施があったのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、あちらは「酒酔い・酒気帯びがあったとき」に適用される法令で、こちらは普段から点呼を行っているかどうかがポイントです。

遠隔点呼や自動点呼という新しい制度が用意され、点呼業務の敷居が下がっています。点呼システム導入には様々な補助金もあり、点呼をやらずに出発も到着も認めませんというメッセージが強く伝わってくる内容です。

正直、胃が痛くなりました。言っていることは正論だし、分かりますが……。

パブコメしてみた

この厳罰化は政策パッケージの方針にうたわれている物流業界における「認識変容」、「行動変容」を狙っているんですよね。

端的に言うと、「厳しくすれば、考え方も変わるし、行動も変わるでしょ」と。

正論だけど、なんか厳罰化ばかりに力が入っているように感じるのは私だけでしょうか?

一言物申したい……それにはどうしたらいいかと考えていたのですが「そのためのパブリックコメントではないか」と気が付きました。

ということで、実際に投稿してみました。

「こんなことしても意味ないよ」と思う方もいるかもしれません。

でも、何もしなければ何も起きないのは事実です。なので、行動を起こしてみました。

こちらの意思が相手に伝われば、あちらの認識も変わって、何か行動を起こしてくれるかもしれないですしね。

最後にこの法改正案ですが、2025年1月に適用される予定になっています。

この法案ですが、2024年10月1日(!)から適用されることが決定されました。前倒しを希望する声が多く、繰り上がったようです

今回はこれで失礼いたします。

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