第ニ章  基 本 計 算

 
加 減 法

加減法の場合は、キャレージ()を、インジケーター()が左ダイヤル()の第1位を指す位置にあわせます。
 
・ 加  算

例 題  468 + 514 + 392 = 1374

1. 置数レバー()下位に468を置きます。

2. ハンドル()を(+)方向に1回転し、468を右ダイヤル()に移します。
3. レバーの数を514に置き換え、(+)1回転します。
4. 同様にレバーの数を392に置き換え、(+)1回転します。この結果右ダイヤルに答え1374が得られます。

 
・ 減  算

例 題  936 - 784 = 152

1. レバーの下位に936を置き、(+)1回転して右ダイヤルに移します。
2. レバーの数を784に置き換え、(−)1回転します。この結果右ダイヤルにその差152が得られます。

 
乗   法

(計算器での乗算は、加算の反復によって行われます。)
乗算の場合は、インジケーターを左ダイヤル第1位に合わせます。
 
a. 整数の乗算

例 題1  425 x 5 = 2125

1. レバーの下位に425を置きます。
2. ハンドルを(+)5回転します。左ダイヤルの第1位に乗数の5が現れ、同時に右ダイヤルに積の2125が得られます。



例 題2  425 x 325 = 138125

1. 4255を上の方式で計算します。
2. 桁送りでキャレージを一桁右に送り(インジケーターが左ダイヤル第2位を指す位置)、(+)2回転してここに2を現します。
3. 更に1桁右へ送り、左ダイヤル第3位に3を現します。


乗法の公式

被乗数(レバー) x 乗数(左ダイヤル) = 積(右ダイヤル)


 
b. ハンドルの回転数減少法
乗数に7・8・9を含む場合は、左ダイヤルの十進退機構を利用して、ハンドルの回転数を減少することが出来ます。例えば、ある数を9倍する場合には先に10倍し、次に1倍引けばよいのです。

例 題1  538 x 19 = 10222

1. レバーに538を置き、左ダイヤル第2位で(+)2回転します。
2. 1桁右へ送り、第1位で(−)1回転します。


例 題2  3045 x 879 = 2676555

左ダイヤル第4位で(+)1回転
   〃  第3位で(−)1回転
   〃  第2位で(−)2回転
   〃  第1位で(−)1回転


 
c. 小数の乗算
小数を含む乗算は計算を行う前に位取りしておきます。その方法は次の公式によります。

乗算・位取りの公式

被乗数の小数点以下の桁数(レバー) + 小数の小数点以下
の桁数(左ダイヤル) = 積の小数点以下の桁数(右ダイヤル)

例 題  54.321 x 29.18 = 1585.08678

1. レバー被乗数の54321を置き、位取指針を3に置きます。
2. 乗数の小数点以下は2桁ですから、左ダイヤル2に指針を置きます。
3. レバーを小数点以下3桁と、左ダイヤルの小数点以下2桁の和・5桁を右ダイヤルに位取します。
4. 左ダイヤルに29.18を現せば、積は1585.08678と位取りされて右ダイヤルに得られます。


 
d. 乗数(又は被乗数)が一定の乗算

例 題  957 x 33 = 31581
       957 x 41 = 39237
       957 x 29 = 27753

1. 第1回目の乗算を普通に行ない31581を得ます。
2. 次に各ダイヤルいずれも帰零せず、左ダイヤル第2位の3を(+)1回転して4に、第1位の3を(−)2回転して1に換えれば、2回目の乗算の答え39237が得られます。
3. 更に、第1位で(−)2回転して19に、第2位で(−)1回転して32にかえれば、27753が得られます。

注:置数レバーには、被乗数または乗数のどちらかの一定の数字のほうをセットすること。

 
e. 連続乗算(連乗)

例 題1  643 x 12 x 16 = 123456

1. 643 x 12 = 7716を計算します。
2. キャレージを元へ戻します。(レバーと右ダイヤルの最下位がそろいます)
3. レバークリヤーを後方へ押して、レバーを帰零します。
4. 連乗用ツマミを左方に押します。
5. 連乗用ツマミを左方に押したまま、右帰零ハンドルを手前にカチンと倒します。これで右ダイヤルの数7716はレバーに移りました。
6. 左ダイヤルを帰零します。
7. 左ダイヤルに次の乗数16を現わせば答が右ダイヤルに得られます。

例 題2 12 8 = 429981696

このような高次数の計算は次の算式に従って操作します。

12 8 = {(12 2 ) 2 2
1. 12 x 12 = 144を計算し、左ダイヤルを帰零します。
2. 右ダイヤルの144を連乗機構でレバーに移し、左ダイヤルにレバーの数と同じ144を現します。
これで 12 4 = 144 2 = 20736が出来ます。
3. 同様に 20736 x 20736を行なえば答えが得られます。

注:
1.
 レバーに移す数が10桁以内のときは右ダイヤルとレバーの最下位をそろえます。
2.
 レバーに移す数が10桁を超えるときは上位10桁を移して、計算を続けます。この場合、求められた答えの有効桁数は10桁以内です。
3. 特装型H68−Sでは、連乗用つまみがありませんので、中間の答を、手で置数レバーに書き直してください。

 
除   法

(計算器での除算は、減算の繰り返しで行れます)
除算の場合は、インジケーターを左ダイヤル最上位に合わせます。
 
a. 整数の除算

例 題1  48 ÷ 12 = 4

1. レバーの上位に被除数48を置き、(+)1回転して右ダイヤルに移します。
2. 左ダイヤルとレバーを帰零し、同じくレバーの上位に除数の12を置きます。
3. ハンドルを(−)方向に回転します。
4. (−)回転を繰返しますと5回目にベルが鳴ります。これは引き過ぎたという警告のベルです。
5. そこでクランクを1回(+)方向に戻しますと再びベルが鳴り、右ダイヤルは割り切れて0となり、左ダイヤルに商の4が得られます。
2度目のベルは、右ダイヤルの引き過ぎを訂正出来たという合図です。

(被除数) (除数) (商)
クランク 右ダイヤル レバー 左ダイヤル
048 048 0
(−)1回転 036 1
024 2
012 3
0 4

(警告のベル)
988 5
(+)1回転
(訂正のベル)
0 4


例 題2  782 ÷ 23 = 34

1. 右ダイヤルに782を、レバーに23を置いて、(−)回転を続けます。
2. 警告のベルが鳴ったら、戻して訂正のベルを聞き、1桁左に送ります。
3. 更に(−)回転を行ない、同様な操作を行えば、左ダイヤルに商の34が得られます。

除数の公式 

被除数(右ダイヤル) ÷ 除数(レバー) = 商(左ダイヤル)

除算の注意
1.
 被除数を右ダイヤルに移したら、必ず左ダイヤルを帰零して下さい。
2. (−)回転を続ける場合、警告のベルを聞くまでは早く回し、戻すときはゆっくり回します。
3. 警告のベルを聞いて回しすぎても、回しすぎた回数だけ戻せば訂正のベルが鳴り、そのまま計算を続けられます。
4. 除算では、その桁で(−)回転で鳴る警告のベルと、戻して(+)回転で鳴る訂正のベルを、必ず二度聞いて下さい。

 
b. 小数の除算
小数を含む除算は乗算と同じように、計算を行う前に位取りし、その方法は次の公式によります。

除法・位取りの公式

被除数の小数点以下の桁数(右ダイヤル) − 除数の小数点
以下の桁数(レバー) = 商の小数点以下の桁数(左ダイヤル)

(各桁数は器械面での桁数です)   .


例 題1  945.892 ÷ 26.57 = 35.6

1. 945.892を右ダイヤルに置き、位取指針を17に置きます。
2. 2657をレバーに置き、8に位取りします。
3. 右ダイヤルの小数点以下17桁から、レバーの小数以下8桁を引いた9桁を、左ダイヤルに位取りします。


4. 計算を行えば、商は左ダイヤルに位取りされて得られます。


例 題2  98765.4321 ÷ 543.21 = 181.81814049
                   
余り  0.0000044271

注:割り切れない場合には、右ダイヤルに残った数が余りで、その小数位は、最初に取った被除数(右ダイヤル)の小数位と同じです。

 
c. 逆数の計算

例 題1   1 .
256
= 0.00390625

1. レバーの上位に256を置きます。(キャレージは除算と同じ位置)
2. 位取りします。この計算は、右ダイヤル21桁目に1が置かれているものと仮定して計算しますので、右ダイヤルは20に、レバーは7に位取指針を置き、左ダイヤルは207 = 1313に指針がくる訳です。
3. ハンドルを(−)1回転します。ベルが鳴って、計算器面は次のようになっています。

4. 右ダイヤル21桁目の9が無いものとして、744÷256の操作を続けます。6桁目で割り切れて左ダイヤルに390625が得られます。
なお、計算後右ダイヤルは9000000・・・・・となっています。

注:9を残したままで除算をしますので上位の計算ではベルが鳴りません。右ダイヤルを見ながら数の増減に気をつけて下さい。

注:
逆数の求め方は、この他に、1を普通に割る方法、乗法による除算の法もありますが、上述の方法が最も便利です。


 
d. 除数が一定の除算
数回、或いは十数回の除算で除数が同じである場合には、まず除数の逆数を求め、乗数が一定の乗算に直して計算します。

例 題   3152 ÷ 2617 = 1.20443255
       2967 ÷  〃  = 1.13374092
       4839 ÷  〃  = 1.84906381
       15241 ÷  〃  = 5.82384409

1.  1 .
2617
= 0.003821169277逆数の計算法に従って計算します。
2. レバーを払い、左ダイヤルに得られた逆数をレバーに置きます。
3. 左・右ダイヤルを帰零します。
4. レバーの小数点以下は13桁で左ダイヤルは0ですから、右ダイヤル13に位取りします。
5. 左ダイヤルに順次3152・2967・4839・15241を現わせば各々答が得られます。


注:逆数の有効桁数が10桁ですから、所要の商は9桁まで求めます。

 
e. 乗法による除算
前述のように、普通の除算は、減算の繰り返しによって、行われますが、逆に除数を何回か加え合わせて被除数を作り、その加えた回数を商とする事が出来ます。

例 題1  15 ÷ 5 = 3

1. キャレージを、インジケーターが左ダイヤル第10位を指す位置に合わせます。
2. レバーの最上位に除数の5を置き、(+)3回転しますと右ダイヤルに被除数の15が出来ます。

3. 位取を行なって、左ダイヤルに商の3が得られます。

注:この場合の位取は、普通の除算の場合と同じです。


例 題2  66666 ÷ 542 = 123

レバー クランク 右ダイヤル 左ダイヤル 桁送り
542 (+)1 54200 100 1桁左へ
542 (+)2 65040 120 1桁左へ
542 (+)3 666666 123

注:割り切れない場合には、被除数の近似値を作っていきます。余りは補数の形で得られますので、実数に直して書き取ります。


例 題3  32123 ÷ 295 = 108.89152542
                   余り  0.0000011

この計算法では、計算終了後、被除数・除数・商共に器械面に残っています。被除数の桁数が比較的小さい場合便利な方法です。



 
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